2014年3月31日月曜日

医者の人事について

医者はどこから来るのか?

医療者の人はよくご存じですが、案外知られていない医師の人事。
ちょっとご紹介しようと思います。

まず、ちょっと前までのお話しですが、今から10年前ぐらいまでは、

「医局」

という大学の人材確保部門が機能していました。
各大学を会社とたとえると、内科、外科、眼科、皮膚科etcそれぞれに「教授」(社長)がいて、医局員(社員)がそれぞれにいます。科によって大学病院以外に地域の病院にポストを確保していて、働く場所を医局員(部長以下、社員)に提供していました。大手の企業のように、本社(大学)で働くこともあれば、各支店(地域中核病院や、僻地)へ派遣されることも当然でした。会社員が「派遣された!」といっているのと同じです。

 場所によっては、いい環境もあれば、劣悪環境も当然あります。(会社と同じですからいろいろな理由があるでしょう。上司とうまくいかない。周り人間関係、生活環境など) 2年から5年のスパンでぐるぐると派遣先を移りながら、各支店長(地域中核病院の院長や部長)や本社の部長(大学病院の助教授や助教)になっていくことが普通でした。その中で、大手の会社を辞めて自営をする人がいるように開業する医師がいました。

 補足すると、一般の会社と異なるのが、医師は国家試験を通らないとなれないため、大学は職業訓練校なわけです。各大学100人の同期がいて、国立、公立、私立を含めて全国に80カ所。約8000人が毎年医師になります。これを多いと取るか、少ないと取るかそれぞれに考えてみて下さい。単純計算にして、各都道府県で、200人弱の医師が毎年増えるわけです。また、同時にご高齢となり医師を辞める方もおられると思いますので、年間100人ぐらいが増えるのでしょう。(あくまでも単純計算ですが。)その100人が医局(会社)に争奪戦となっていたのが、10年前までの医者の世界です。自分のやりたい科だから入局する。仲のいい先輩がいるから入局するという具合です。 
 加えて、自分が卒業する大学以外の医局に入るというのは、とてもめずらしいことでした。様々な理由で大学は地元の大学に行かなかったけど、医師として地元で働きたい!と思った場合は、その地元のポストを持っている地元の大学病院の科に入局しないといけませんでした。また、希望を出しても、会社同様に会社の都合で勤務地が変わるということもざらにあります。(今でも、医局人事はそのようなことが行われているところもあります。)とにかく、「医局」(会社)というのはとても力がありました。

 話を戻して、100人の新人医師は各医局に入りますが、医局というのは、各大学に10~20ほどあります。(第1内科、第2内科、第3内科、消化器外科、心臓外科、呼吸器外科、小児科、産婦人科、皮膚科、眼科、泌尿器科、精神科、耳鼻科、麻酔科、救急科etc)
 そうすると、各医局に0~5人程度入るともう人はいません。その人数で各県内をカバーしないといけません。教授(社長)からすると人材確保は大変です。1から育てないといけない。また、刃向かう医局員(社員)、働かない医局員(社員)も当然いるわけですから、研究や実臨床だけでなく、人材確保というのも一つヤマになります。

 そんな現状の中で、良くも悪くも恩恵を受けていたのは地域医療です。地域には、医師がいません。なぜなら、人は都会に(住みやすいところに)住みたいからです。それは医師も当然です。地域で働きたい!と思う人は少数派、または、その地域に思い入れがある(出身者などゆかりがある)場合のみでしょう。このような現状で、各地域の病院は、事務方または地域の院長(支店長)が、「人材をお願いします!」と、教授(社長)にお願いすることで、なんとか人材確保を行っていました。ですので、2~5年単位で、医師が出向というような言葉で表されるようにころころと変わっていました。その中には、いい医者(働く社員)やそうでない医者(働かない社員)がいて、地域住民からすると、「医師はころころ変わるから、嫌なんだけどな。ずっと診てくれる医者がいいのに・・・」という意見が多数です。確かに、その地域におられる住民の方からすれば、本音だと思いますし、お気持ちもわかりますが、現実厳しいというのが前置きの話でわかってもらえるでしょうか。それでも、何とか「医師数の確保」という点では守られていました。

ところが、10年ほど前から始まった臨床研修制度により、一気に事態が変わりました。今まで、医学生、研修医を育てるのは、大学病院(本社)中心でしたが、そこに一気に力を出してきたのが地方病院や市中病院(各支社)です。自分たちの病院で、研修医を育て、できればそのまま後期研修医として残ってもらい、スタッフとして育てていきたい!そのように時代の流れが変わってきました。そうすると、医学生は、自分の出身地の市中病院や出身大学ではない大学の臨床研修にどんどん出て行くことになりました。よって、都会で研修をしたい(病院自体の研修が優れているから。都会に住みたいからetc)学生が増え、地方大学はさらに大打撃を受けました。今まで100人程度の新卒がいたのに、新卒生自体が30人~50人程度になったわけです。

 そうすると、各医局(会社)は大変です。新しい医者(社員)が増えない。でも、独立する医者(起業する社員)はいる。どんどん、会社に人がいなくなる。大学(本社)を守ろうとすると、必然的に地域に派遣していた医師(各支店に出向していた社員)を大学(本社)に戻すしかない。
 これが、地域医療崩壊のひとつの原因です。

他にも、原因はあります。日本では、研修医は自分が進みたい「専門科」に進むことが許されています。アメリカでは、皮膚科が何人、救急科が何人、外科が何人と国で人数制限がかけられているので、「専門科」の偏りは幾分か解消されています。日本では、その規制がないため、人気の科にはどんどん進んでいく可能性があります。特に、この初期研修制度が始まってから、学生の時にはわからなかった専門科の実際の仕事をみて、希望科を変える研修医がとても増えました。医局に縛られない、海外で追加の研修をする医師の割合も増えました。それぞれの医師が、自分たちの力で仕事をつかんでいるという印象もあります。

 となると、地域はさらにやっかいです。今まで、とりあえずどんな医師でも人材確保ができていたのに、つてがなくなった。(各支店長と本店という関係がなくなった。)特に魅力的でない病院はそのあおりをもろに受けます。医師にとって魅力的でない病院とは色々ありますが、例えば、魅力的な病院といえば、患者がたくさん来る(症例が豊富)、魅力的な指導医がいる、生活環境がよい、処遇がよい、働く環境として綺麗etc 自分の力が思う存分に発揮できる場であったり、不毛な扱いを受けない職場が魅力的な病院なのだと思います。では、それは誰が作るのか。

 そのような環境は誰が作るのか?


今までの流れでわかりますよね。ぐるぐると変わる、医師が引き継ぐだけでなく、その「場」に残り、地域を守っている住民や職員(コメディカルや事務方)です。
これから、ますます、医師確保が難しくなっていきます。毎年卒業生がいるにも関わらず、地域には医師が来ない。でも、ちょっと考えて下さい。働きやすい環境であったり、自分が成長できる、自分を必要とされているという環境であれば医師は来るはずです。そのような環境を作り、維持し、どんどんいい方向へ、いい方向へと改善していくような病院は、自ずといい医師が集まるはずです。

長文にお付き合い下さいありがとうございます。明日から4月です。新年度です。
新しく、医師になられる方、医療職につかれる方、医療の事務として働かれる方、どの地域にいても「for the patient」で。とても、楽しい仕事ですよ。


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